オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のオレンジへ、2泊3日でワイナリーを9軒回るワイン旅。
最初の3軒の記事はこちらです。
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「メェ~」という羊の鳴き声で目覚めた私たちは、ナッシュデール・レーンのブドウ畑を眺めながら朝ごはんを食べ、2日目のこの日もワイナリー巡りへと出発しました。
ROSS HILL
www.rosshillwines.com.au
ここロス・ヒルは今回のワイン旅で唯一醸造所見学ができたところです。オーナーのジェームズさん自ら案内をしてくださいました。オレンジの中でも比較的大きなワイナリーで、シドニーのレストランのハウスワインを醸造していたりもするそうです。
また、環境に配慮してワイン造りを行っており、NCOS認定のカーボンニュートラルワイナリーとしてオーストラリア政府に登録されています。というようなことを英語で説明してくれたのですが、全部理解しているとは言い難かったため調べていたらこちらの記事を発見しました。
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豪州で唯一の、炭素中立(カーボンニュートラル)醸造所 - ピーター・ロブソン × ロス・ヒル・ワインズ(Ross Hill Wines)
この記事の中に、とんでもないパワーワードを発見。
ロス・ヒルのワインを飲んでいる時、あなたは環境のために細やかな行動をしている事にもなる。それはまるで、世間の汚れをワインで洗い流しているかのような、特別な気分にさせてくれる。
世間の汚れを洗い流すためにロス・ヒルのワインをもっと飲もう、と誓いました。
30分ほどの醸造所ツアーでは、白ワイン・赤ワインの造り方の説明、樽の貯蔵庫見学などがありました。一番興味深かったのが、瓶詰屋さんがトラックを醸造所内に乗り入れてワインのボトリングをしていたところです。
ちょうど10時のおやつタイムだったのでしょう。スイカのスライスやマフィンを頬張りながら、慣れた手つきで作業をしていました。作業中のお兄さんが、オーディエンスが増えた途端にボトルを片手でくるくる回してかっこつけているところ、私は見逃しませんでしたよ。
かっこつけているというか、かっこよかったです。この瓶詰屋さんVintage Bottlingはボトリングのプロ。世の中にはいろんな仕事があるんだよな、と妙に納得しました。
醸造所見学のあとは、テラス席でのテイスティング。家族経営ワイナリーなので、やはりファミリーメンバーの名を冠したワインがたくさんありました。
10種の試飲の中で一番お気に入りだったのが、Family Tempranilloというワインです。テイスティングルームのお姉さんは「この香りは私にとってまさにクリスマスフレーバーなの!」と言いながらワインを注いでくれました。赤い実のフルーツやスパイス感が、クリスマスプディングを思い起こさせるのだそうです。
お姉さんは「サマーレッドワインとしてグッドよ!」とも言っていました。そうです、ここはオーストラリア。まもなく真夏のクリスマスがやってきます。
ほんのりスパイシーでチャーミングなファミリー・テンプラニーリョは、まさに家族で食卓を囲み皆でワイワイ飲むのにぴったり。ワインの色もルビーとかガーネット、と言うよりも「クリスマスの赤!」という表現がぴったりな感じの明るい色合いでした。
私たちも、真夏のクリスマスに少し冷やして飲んでみたい!と思い購入しました。
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そんな感じでごきげんにワインを飲んでいたら、先ほど醸造所を案内してくれたジェームズさんが「君たち日本人だよね?」とテーブルに来てくれました。そこでジェームズさんは、ワインの話をするでもなく日本のビールが世界一美味しいと語り始めました。
日本に旅行した時、毎晩とてつもない量のビールを飲んだんだとか。もちろん日本のワインも飲んだけど、ワインはどうしても仕事の頭になってしまうから、ひたすら美味しく楽しめるビールはすごく好きだとニコニコ。
ASAHIで英気を養い、これからも美味しいワイン造ってください。ジェームズさん、丁寧に案内してくださりありがとうございました。
COLMAR
colmarestate.com.au
大変失礼ながら、ロス・ヒルの近くにあったから行ってみるか、と最後に付け足したワイナリー。しかし結果的に私たちはここコルマーのワインが強く心に残っています。
綺麗に整備されたブドウ畑の間を車で入っていくと、セラードアの建物が見えてきました。あまりに綺麗な風景だったので助手席で動画を取り始めたら、突然野生のカンガルー3匹がピョンピョンとすぐ前を横切って行ったのです。
大興奮の私はセラードアについてすぐ挨拶もそこそこに「今ね、カンガルーがね、」とテイスティングルームを仕切るマダムに話したのですが、オレンジでは野生のカンガルーは特に珍しくないようでした。
この穏やかな女性はコルマーの創設者・ビルさんの奥さんジェーンさんで、「ビルは畑に出ているため、私がここをご案内します」とワインのサーヴと説明をしてくれました。
アイテムリストには、ゲヴルツトラミネール、リースリング、ピノ・グリとフランスのアルザス地方を代表する品種が並んでいます。飲み始めて驚きました。上から順番に全部が美味しいんです。
特にシャルドネは、蜜りんごみたいな果実味と、絶妙に効いた樽香がどストライク。このワイナリーが表現したい世界観が私の好みにぴったりだったんだと思います。
そして嬉しいことに、大好きなアルザスブレンドのワインがありました。ゲヴルツトラミネール、ピノ・グリと少しだけ遅摘みのリースリングで造ったというこのワインLe Mocheは、食事の邪魔をしないくらいほんのりと甘く、アロマティックで本当にアルザスワインを飲んでいるような幸福感に包まれます。
(私はジョンティというアルザスの伝統品種4種を使ったワインが大好きです。この3種のブレンドはエデルツヴィッカーというブレンドなんだそうです。詳しくはこちら⇒Le Moche: our unlikely cult wine – Colmar Estate)
アルザス、アルザス言ったらここはオレンジなのに失礼だろうかと思いましたが、この「COLMAR」というワイナリー名はアルザスの街「コルマール」の名前から取ったそうなのです。「まるでアルザスワイン!」は最高の褒め言葉かもしれません。
シャルドネ、ル・モッシュ、スパークリングの計3本を購入し、最後に「実は…」とジェーンさんにお話しました。コルマーのピノ・グリを私が働くレストランで使っていて、とてもファンが多いんです、と。
そしたら終始穏やかだったマダムが、キャッキャと喜んで「この小さなワイナリーのワイン、シドニーまで届けるの本当に大変なの。とても嬉しい!」と言ってくれました。私、これからも一生懸命売りますよ!
ジェーンさんは8年前に夫婦でコルマーを立ち上げる前は、ナースだったそうです。「俺たちも60歳になったらワイナリーできるかな」とぬるいことを言い出す夫を横目に、次のワイナリーへ!
DE SALIS
www.desaliswines.com.au
車でぐるぐると山を登って着いたのは、標高1030mの場所にあるデ・サリス。セラードアの横に民家もあり、ここでブドウ畑とともに生活をしている様子が垣間見られました。
デ・サリスのワインは、とても良い意味でシリアスなワインでした。まだ固さが残るもの、熟成を経たearthyな香りを感じるもの、合わせるお料理を慎重に決めたいものなど、手放しに「おいしーたのしー」と飲めるワインとは一線を画しています。そして周辺ワイナリーより価格の最低ラインが10ドルほど高いのです。
最初は気難しいところに来てしまった、と思ったのですが、セラードアのお兄さん・ベンさんが本当に丁寧に説明してくれて、家族で造るワインのこだわりと信念を知ることができました。
ベンさんがセールス&マーケティングを担当、お兄さんがヘッドワインメーカーという家族経営のワイナリー。お兄さんの味覚の凄さを何度も褒めたたえていて、とても信頼していることが伝わってきました。
ワインはシリアスでも、ベンさんは気さくで正直に色んな話をしてくれます。
(私たちがソーヴィニヨン・ブランを飲む横で「俺はソーヴィニヨン・ブランが嫌いだ。シャルドネにトライしてほしい!」と声高らかに言っていた。)
印象的だったのは「シャルドネとピノ・ノワールを造りたくてオレンジに来た」という言葉。デ・サリスに限らなくても、オレンジでワインを造る方々はオーストラリアっぽい強くて濃いワインではなく、軽やかで繊細なスタイルに誇りを持っています。
デ・サリスではピノ・ノワールは苗木のクローンを使い分けて細かな味わいの違いを表現し、熟成して美味しいワインに重きを置いているそうです。瓶詰めしてまだ数週間というメルロー&カベルネ・フランのワインも、味わいの奥行きやポテンシャルを感じ、オレンジの思い出として日本に持ち帰る用に購入。
最後に「僕たちはお金のためでなく、ただこのテイストを極めたくてワインを造っている」と、ベンさん。何でもざっくばらんに話してくれたので、より一層この言葉に信憑性がありました。
なんだかんだとお喋りしながら長居をし、高級ワインを2本お買い上げ。オレンジのワインのまた違った側面を見ることができた、素敵なワイナリーでした。
そろそろヘベレケですけど、ワイン旅はまだまだ続きます。
次号もお付き合いいただけたら嬉しいです!
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旅の予習編はこちら⇩
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グランピングの様子はこちら⇩
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