ひつじさんぽ

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オーストラリア女性作家メイ ギブスの家「ナットコート」へ見学に行きました

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オーストラリアを代表する女性絵本作家のメイ・ギブス。日本ではあまり有名ではなく、私も当然知りませんでした。

シドニーで借りたアパートの近くに、コミックウォークと呼ばれる小さな彫刻が飾られた公園があります。そこが私がメイ・ギブスを知ることになった最初の場所です。

初めて出会ったメイ・ギブスのキャラクター「ガムナッツベイビーズ」がこちら。

 

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緑溢れる公園の小道を歩いていると、草木の中からひょこっと見えるこの可愛さ。メイ・ギブスについて調べていると、シドニーのニュートラルベイに彼女のアトリエ兼自宅があることを知り、見学に行ってきました。

 

 

May Gibbs メイ・ギブス について

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1877年イギリスに生まれ、4歳の時に家族皆でオーストラリアに移住しました。小さなメイはオーストラリアの大自然に魅了され、のびのびと育ちます。幼い頃から芸術の才能を発揮し、15歳の時に植物画でアート賞を受賞。

その後、20代の初めには本格的に絵を学ぶためにロンドンに留学をしています。オーストラリアに戻ったメイは、新聞社のイラストレーターとしてキャリアを積み、ライバルとの競争等も乗り越えながら、絵を描くことで生計を立てられるようになりました。

パースからシドニーに引っ越したメイは、ブルーマウンテンの美しさに魅せられ、想像力溢れる森のおとぎ話を作り始めました。そして1914年1月、ガムナッツの木から生まれたキャラクター「ガムナッツベイビーズ」が雑誌の表紙に。これを機に他の出版社からも依頼が入り、オーストラリアの伝統的な植物をモチーフにしたベイビーのキャラクター「ブッシュフェアリーズ」が誕生するのです。

ここから数年後、パースの両親の元に帰省したメイは、後の夫となるジェームズに出会います。初対面で惹かれあった二人は、短期間の交際の後1919年に結婚。シドニーに戻った二人は、1925年、ニュートラルベイに「ナットコート」というアトリエ兼家を建てました。90歳で引退するまでメイはナットコートで制作活動を続けます。

そのナットコートが、現在では見学ができる仕様になり、ティールームが併設されて一般に公開されています。

 

参考:About May Gibbs - Australian Children's Author & Illustrator

 

シドニー公共交通機関フェリーにはメイ・ギブスの名前が付けられた船があります。

 

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メイ・ギブス ナットコートの場所

 

ニュートラルベイの海沿いに立つ可愛らしいおうちです。フェリーやバスで訪問できます。

 見学ツアー・ティールーム共に現在はこちらから要予約。

WELCOME TO THE HARBOURSIDE HOME OF MAY GIBBS

見学が10ドル、サンドイッチとスコーンのアフタヌーンティーが15ドルでした。

 (※2020年9月時点)

 

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一時間の見学を終えると、テラス席に素敵なアフタヌーンティーが用意されていました。

 

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ナットコート見学ツアーで聞かせてもらったたくさんのエピソード

ツアーガイドさんに聞かせていただいた貴重なお話と写真をご紹介します。

※家の中はバルコニー以外撮影禁止です。

 

ナットコートの入口はガレージを改装したギフトショップになっています。

 

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1920年代、この「ダブルガレージ」は相当な珍しさ。ここに車を所有し、メイ自ら運転をしてブルーマウンテンなどへドライブに出かけました。よくぶつけてしまうから、その車には「ドッチ=dodge」とあだ名がつけられたそうです。

 

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このナットコートは、メイが92歳で亡くなった後、彼女の意向でユニセフに寄贈されました。しかし、ユニセフには建物を所有できる権利がなかったため、家は一度競売にかけられます。

新たな所有者が取り壊そうとしたところ、ナットコートを救おうという「メイ・ギブス財団」が設立され、建物は保護されました。その後、ノースシドニーカウンシルが買い取り、今のように一般に公開される形となったそうです。

一度競売にかけられたため、家具等は数点しか戻りませんでした。当時の写真から、似たものを買い集めて再現しているそうです。ダイニングルームにある食器棚はメイが使っていた当時のものだと言っていました。

 

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家の中の様子 

家自体は、当時売れっ子作家だったことを思うと小さめの建物です。メイはとにかく「コンパクトで便利な家を」と設計士にオーダーしたそうです。まさにその通りで、家の中はリビングエリアを囲むように全ての部屋にドアが二つ付いていて、ぐるりと一周できるようになっています。

 

そして、全ての部屋がハーバービュー。窓枠が絵の額縁のように、様々な角度から見えるニュートラルベイを切り取っています。

 

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キッチンはドールハウスのように小さくて、最低限の設備しかありませんでした。メイはほとんど料理をしなかったそうです。夫のジェームズが亡くなった後、メイはパンとチーズとフルーツしか食べなかったと聞いて、少し寂しい気持ちになってしまいました。 

それから当時は電気の冷蔵庫はなく、氷の塊を入れて冷やす木製タイプ。メイの家を買い戻して再生する際、冷蔵庫はもうなかったけれど、どこにあったかはすぐ分かったそう。

本当は溶けた氷を受けるトレーの水を捨てなければいけなかったのに、メイは億劫に思ったのか何度も溢れさせてしまったようです。「そこだけ木が変色していたからすぐに分かったの!」とガイドさんは笑っていました。

 

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また、動きやすい導線の家を望んだメイは、トイレをバスタブの横に持ってきました。今でこそオーストラリアの家では当たり前ですが、この時代はトイレは家の外についているのが一般的だったそう。

それだけ制作に没頭したかったのと、やっぱり少し面倒くさがりな性格だったのかな、と微笑ましいです。  

家の中で唯一写真撮影が可能なバルコニー。メイは1932年、このバルコニーでハーバーブリッジの完成を見届けたそうです。ご近所さんを呼んで大盛り上がりだったと言っていました。制作に疲れた時には、このバルコニーで休憩したのでしょう。

 

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裏庭と中庭の様子 

裏庭も素晴らしいハーバービューです。よーく見てください。岩礁に何か見えませんか?

 

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いました!メイのキャラクターのひとつ「Little Obelia」だと思われます。

 

絵本の世界のワンシーンも見られました。バンクシアマンに吊るされる、ガムナッツベイビーの危機。

 

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メイはスコティッシュ・テリアと暮らしていました。1月のメイの誕生日には今も、スコティッシュ・テリアを飼うメイのファンたちがナットコートに集うのだとか。

 

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たくさんの木や花に囲まれた裏庭。眼前には青い海が広がり、この風景を独り占めしたくなりました。

 

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中庭には、私が初めて見て心奪われたガムナッツベイビーズが佇んでいました。見つめていると、やさしい気持ちになってきます。

 

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帰り際、ギフトショップでガムナッツベイビーズの本を見つけました。やっぱり読んでみたいと思い、図鑑並みにに重い45ドルの本を購入。毎朝ガムナッツベイビーズに会えるように、食パンにちょうど良さそうなサイズのお皿も買いました。

見学やティールームの予約がなくてもショップの利用はできます。 

 

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おわりに

ナットコートが今も大切に大切に受け継がれている様子を見て、胸を打たれました。また、今まで作品のほんの一部しか知らなかったメイ・ギブスを近くで感じることができ、本当に感動しています。もっとたくさんの人に知ってもらい、これからもずっと語り継がれていくことを願っています。

 

★ナットコートの公式HPはこちら⇒WELCOME TO THE HARBOURSIDE HOME OF MAY GIBBS

 

★メイ・ギブスの公式HPはこちら⇒May Gibbs Official Site - Classic Australian Children's Books

 

★メイ・ギブスのキャラクター彫刻が見られる公園もおすすめです! 

hitsuji-cozy.hatenablog.com

 

★日本語に訳されたメイの絵本は2冊。ナットコートの本棚には日本語の「スナグルポットとカドルパイ」が置かれていました。

 

 

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