まだ日も高い午後からワインが飲みたくなり、20ドル以内のピノ・ノワールを探し求めてワインショップへ。高級品種と言われるピノ・ノワールなので、20ドル以内のものは数えるほどしかありません。そんな中、目が合ってしまったこちらのナチュラルワイン。なかなかの個性派でした。
The Hero of Zero Pinot Noir 2019
産地 | 南オーストラリア州 |
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品種 | ピノ・ノワール |
生産年 | 2019 |
タイプ | 軽やかで繊細 |
価格 | 18AUD |
予想通り、開けたては還元香(※)がしたので、グラスを回してゆっくり飲むことにしました。還元香が落ち着くと、チェリーやすみれの香りがします。腐葉土やキノコのような湿った香りも感じます。
味わいは、小粒の酸っぱい苺のような果実味、酸味も豊かでした。また、ワインはノンフィルターのようで、曇りのあるルビー色。ピュアで優しい口当たりですが、ナチュラルワインを飲み慣れていない私には独特の香りや味わいをどう表現していいのか難しい…。
3分の1ほど残して次の日に持ち越すと、還元香はすっかり飛び、明るくフルーティーな味わいを楽しめました。やっぱり難しいワインなので、時間をかけてゆっくり飲むのがおすすめです。午後からグビッと飲みたい時は、溌溂とした分かりやすいワインの方が良かったかなと思いました。
※還元香とは?
ワインを醸造する過程で酸素が欠乏して発生する硫化水素から出てくる香りです。硫黄のようなツンとした匂い。酸素が欠乏する原因の一つとして、ワインの澱(おり)が酸素を吸収してして還元状態にしてしまうことが挙げられています。
自然な造りにこだわる生産者は、澱引きをしないことが多いため、ナチュラルワインには還元香のあるものが多いとか。また、コルクのワインならば酸素がほんの少しずつ瓶内に入っていくけれど、スクリューキャップのワインは密栓されてより還元状態になりやすいのだと思います。この香りは空気と触れさせることで自然となくなっていきます。
ワインの情報がインターネットであまり見当たらなかったので、この強いメッセージを読み解いていきました。
酸化防止剤に関するあれこれ
NO ADDED 220 IN THIS PINOT! 220無添加ピノ!
220というのは、食品添加物である亜硫酸塩=二酸化硫黄(SO2)のことです。亜硫酸塩は添加物ではありますが、ワインの酸化防止や殺菌効果に作用し、品質を安定させるメリットがあります。
使わないとワインが劣化するかもしれないのに、添加せずにどうするのか。空気との接触を最小限にする、加熱処理をする、目の細かいフィルターで雑菌を取り除く、など醸造者それぞれの方法で品質を保っているそうです。
日本でワイン販売の仕事をしていた時に「SO2フリーでなくては絶対ダメ!」というお客様にたくさんお会いしました。真相は分かりませんが、二日酔いや頭痛の原因になるとも言われています。ただ、亜硫酸塩は添加しなくてもワイン醸造中に少量発生することもあり、完全に取り除くことは難しいです。また、他の食品などに比べるとワインに使われるのはごく少量です。
ブルゴーニュで修行したソムリエの大先輩は、「現地で飲めばSO2フリーワインの本当の美味しさが分かるけれど、輸入の長旅を経てその味がそのまま日本で楽しめているわけじゃない」と言っていました。
The Hero of Zeroのメッセージ
このワインは、sulphites=亜硫酸塩はもちろん、preservatives=防腐剤も使っていません。その理由として、ラベルの裏に下記のようなことが書かれていました。
自然な手法による醗酵の中で、ワインは自ら保存作用を造り出します。その作用により、ワインの明るく力強い魅力を少なくとも3年間保つことができます。だから防腐剤や酸化防止剤を使わなくてもワイン造りができるのです。
ブドウのパワーを引き出し、ワインの成長を見守る、根気のいる方法。
まとめ
添加物に徹底的にこだわる方にはおすすめしたいピュアなワイン。でも、本来の美味しさを味わうには少し時間がかかるので「一晩で一本飲んじゃうよ!」という私のような方は、もう一本別のワインも用意してゆっくり楽しみましょう。
[酸化防止剤に関する参考サイト] 酸化防止剤がワインに与える効果と影響 | エノテカ - ワインの読み物