シドニーからインディアンパシフィック号に乗ってパースへ。到着後のパースでは2泊3日という短期滞在の中、日帰りでマーガレットリバーに行ってきました。南半球で一番長い桟橋と3つのワイナリーの訪問記です。
⇩インディアンパシフィック乗車の様子はこちらです
パースからマーガレットリバーへの日帰り遠足
マーガレットリバーはパースから南へ約300㎞、車で約3時間の場所にあります。数泊して楽しみたい見どころの多い観光地ですが、私たちは休暇日数の関係でどうしても一日で戻らなくてはなりませんでした。
何個か見つけたパース発のバスツアーは曜日が合わずに諦めました。いつものワイン旅のようにレンタカーも考えましたが、私よりもマーガレットリバー訪問を楽しみにしている夫に、ワインを飲まずに往復6時間運転してとは可哀そうで言えず。(私はペーパードライバー。)
そんな中で見つけたのが、パースドリームトラベルプランナー(以下ドリプラ)という旅行会社でした。
ドリプラさんはパース在住の日本人の方によるツアー会社で、なんと車一台のチャーターをお願いできるのです。ドリプラさんのブログでマーガレットリバー日帰りチャーターの記事を見つけ、メールですぐに問い合わせ。マーガレットリバーへの12時間コースと、翌日のスワンバレー4時間+空港送迎コースを申し込みました。
今回この強行スケジュールのワイン旅を存分に楽しめたのは、ドリプラさんのおかげです。
パースを出発しバッセルトン桟橋へ
朝7時、ドリプラさんのバンがホテルに迎えにきてくれました。2人で貸切るにはもったいないくらいの広さの車です。
ドライバーさんの軽快な運転でどんどん南へ向かいます。日本在住歴のある大変親切なドライバーさんで、道中パースやマーガレットリバーについて様々なお話を聞かせていただきました。パースには冬がなく、春夏秋がさらに6つの季節に分かれているんだとか。天気予報はほとんどあてにならず、スコールのような豪雨が降ったり止んだりを繰り返すこともよくあるそうです。
どんよりと怪しい空模様の中、無事にバッセルトン桟橋に到着できるかと心配していた矢先にやはり大雨。まさにバケツをひっくり返したようなどしゃ降りと強風で泣きたくなりました。そんな中でもひょうひょうと運転を続けるドライバーさん。すると10分後には雨があがり空が少し明るくなり始めました。これが西オーストラリアの典型的なお天気模様。
出発から2時間半ほどでバッセルトン桟橋に到着です。現在は観光アトラクションとなったこの桟橋は、1973年まで農作物や家畜、木材の輸出用に使われていました。電車か徒歩で桟橋の先まで行くことができ、終点には水中水族館があります。
往復15ドルのチケットを購入し、電車に乗ってみました。「スリリングなお天気のトレインを楽しんでね!」みたいな車内アナウンスと共にゆっくりと動き出す電車。雲の間から光をさした海がとてもきれいでした。
桟橋の先に着くと、15分後に電車は再出発します。そのまま復路の電車に乗り、往復45分の旅を楽しみました。早くワインが飲みたい私です。
桟橋見学のあとは、さらに30分ほど車に乗ってマーガレットリバーに向かいます。ここでドライバーさんに時間配分の相談をし、予定にはなかったおすすめの小さなワイナリーに立ち寄ってもらうことになりました。
Stormflower Vineyard
ワイナリーの門を入るとブドウ樹の間をぴょこぴょこ走る羊たちの姿が見えて、あまりの可愛さに大騒ぎ。羊たちに雑草を食べてもらうことで、除草剤の使用を控えているのだそう。そんなストームフラワーヴィンヤードは、2017年に有機栽培認証を取得しオーガニックワインを作る小規模ワイナリーです。
ナチュラルな雰囲気のセラードアで、8種類のワインをティスティング。そして素敵なペットナットに出会えました。98%のソーヴィニヨン・ブランに2%だけカベルネ・ソーヴィニヨンを加えたという、かわいいピンク色のワイン。澱がごっそり残っているのですが、とってもピュアでペットナット特有のクセも少なめ。ピーチやグァバのようなみずみずしさがあり、「あ、ソーヴィニヨン・ブランだなぁ」と思いました。日々お気に入りのペットナットを見つける難しさを感じているので、大変嬉しい出会いでした。
ペットナット2本とカベルネ・シラーズを1本購入。この先増えるであろうワインを入れるためのダンボール箱をいただいて、次のワイナリーに向かいました。
マーガレットリバーは弁護士さんやお医者さんなどがリタイア後に趣味でワイン造りをするケースも多く、頻繁にワイナリーの売買が行われているそうです。「あれ?ここも、あそこも名前が変わってる!」とドライバーさんが言っていました。
Cullen Wines
カレンワインズでは美味しいと評判のランチを予約しました。ランチの前にティスティングを薦められたので、もちろん全部いただきます。ペットナットやアンバーワイン、ボルドーを思わせるカベルネ主体の赤、ブルゴーニュを思わせる芳醇な白など、本当に幅広く全てのワインの無敵具合と言ったらもう。そして普段「シャルドネ以外の何か」が口癖だった私が、ここでまさかのシャルドネに惚れ込んでしまったのです。
カレンワインズは、医師であったケヴィンさんと妻のカレンさんによって1971年に設立されたワイナリーです。設立当初から自然な畑を最優先にワイン造りをし、1981年には娘のヴァーニャさんと共に完全有機農法に切り替え、2004年にはバイオダイナミック農法の認定を受けました。
ヴァーニャ・カレンさんは、2022年のハリデーワインコンパニオンでヴィティカルチャーオブザイヤーを受賞されています。授賞式をオンライン視聴していた私は美しいカレンワインズの映像を目にし、「行ってみたい!!」と思っていたのです。ついに訪問できたカレンワインズ。有名ワイナリーであるにも関わらずどこか素朴であたたかみのあるワイナリーでした。
ワイナリーでいただくランチは、メニューの90%以上がカレンワインズのお庭で採れた食材で構成されています。一皿一皿が綺麗で美味しく、丁寧に作られたお料理に心が満たされました。
ここでワイナリー創設者であるケヴィン・カレン氏の名を冠したシャルドネをグラスで注文。普段あまりシャルドネは飲まないけれど、シャルドネの有名な産地だし、ボトルで買うには高級すぎるから、というのが選んだ理由。結果、あまりの美味しさに一本買ってしまいました。もう一本オンラインオーダーしようかと今本気で悩んでいます。
飲んだ瞬間に浮かんだのは、まんまる。ブドウ本来の酸味、燻ぶったような香り、まろやかな果実味、お花の香り、舌に広がるやわらかい感触などなど、いろーんな要素が寄せ集まって緻密なバランスで正確な円を描いているような感覚。しばらくぶりに心底旨いシャルドネに出会えた感じがします。
ウェブサイトの情報によると、シャルドネはビオディナミカレンダーの果物と花の日を含む3週間にわたって収穫され、バイオダイナミック農法の樽、コンクリートエッグ、アンフォラで自然発酵。35%を新樽で8か月間熟成し、清澄・ろ過なしで瓶詰めされました。20年の熟成が可能とのことですが、今飲んだあの感じがたまらなく好きでした。今飲む用とあとで飲む用、やっぱりもう一本必要。
ゆーっくりと2時間近くをかけたランチのあとは駆け足でお庭を散歩し、最後のワイナリーへと向かいました。
Leeuwin Estate
ミニボルドーと称されワイン産地として有望視されたマーガレットリバーで、ロバート・モンダヴィが指導を行ったのがルーウィンエステート。その後デカンター誌が1981年の「アートシリーズ」を世界最高峰のシャルドネとして取り上げ、国際的な注目を集めました。マーガレットリバーに来たのに行かないわけには…という夫の強い希望で訪れたセラードアは、プレミアムワイナリーと呼ぶにふさわしい高貴な空間でした。
アートシリーズを中心に色々飲んでみるものの、若いカベルネ・ソーヴィニヨンって本当に難しいですよね。ボルドーワインの試飲会に行くと飲めば飲むほど分からなくなる感覚を思い出しました。まだまだ早いということであり、まさに偉大なボルドーに匹敵するワインであり、私たちの舌ではポテンシャルを見極めることも難しいと諦めて、気に入ったエチケットデザインのワインを選ぶという買い方をしてきました。アートシリーズには、毎年オーストラリアの若手アーティストの絵が採用されています。
購入した2012年は市松模様のソファーみたいな絵が描かれていて、あるワイン評論家に「オーストラリアのシャトー・ムートン・ロートシルト」と称されたヴィンテージだそうです。大切に日本にハンドキャリーします。
さくっとティスティングをし、ささっと地下の展示室を回り、タイムリミットがやってきてしまいました。購入した5本のワインと共にパースへと帰ります。
やはり日帰りでは到底足りないマーガレットリバーですが、チャーターのおかげでワイナリーにプラス一か所立ち寄ることができ、ランチタイムもゆったりと楽しむことができました。思う存分ワインを飲めたことももちろん良かったです。ほんのすこーしだけれど産地の風を感じることができた充実の一日でした。
翌日は飛行機に乗ってシドニーへ。その前にパース近くのワイン産地スワンバレーでワイナリー巡りを楽しみます。