ひつじさんぽ

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マウントフロームシラーズ ワイルドエール*シラーズを使ったワインみたいなビール【ビール日記】

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先日シドニークラフトビールメーカー『Yulli's Brews』を訪ねた時に、ワイン好きな私たちの心をガシッと掴んだビールがあったので一本買って帰ってきました。

 

hitsuji-cozy.hatenablog.com

Mount Frome Shiraz Wild Ale

マウントフロームシラーズは、穀物とブドウのブレンドで作られたワイルドエールだそうです。ビールは専ら「おいしー!たのしー!」と飲むだけなので、そもそもワイルドエールがなんだか分からず調べてみることにします。

日本語の情報が見つからなかったため、「What is wild ale」と検索。1ページめに出てきたWhat Are Wild Ales? The Beer Style Explained というカナダの女性向けおしゃれサイトの記事(2019年12月)を読んでみました。

 

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ワイルドエールとは?

ワイルドエールは、ワインで言うところのナチュラルワインのような位置づけなのだそう。清潔な施設で培養酵母によって造られるビールとは正反対で、野生または天然酵母を用いて自然に発酵されるビールです。ナチュラルな造りによって生まれる味は奇妙でファンキー。その味に魅了され、アメリカのブリュワリーを始め、カナダやオーストラリアでもワイルドエールを取り入れる造り手が増えているようです。

歴史あるベルギーのビールランビックがワイルドエールの一つで、ビールの原型に最も近いスタイル。上が覆われていない大鍋のような入れ物に入った麦汁に、その地に自生する酵母バクテリアが入って自然に発酵が始まります。

日本ではビールといえば大工場で造られる工業製品のようなイメージですが、オーストラリアのマイクロブリュワリーは少し広めの倉庫のような場所で、ランニングに短パンで髭をたくわえた強面のお兄さんが作業をしている姿をよく見ます。この一風変わったワイルドエールが造られ人気になるのも自然なことのように思いました。

(シェフハットのgoodfoodで2017年にワイルドエールの記事が書かれていたので、その頃から注目され始めたようです。⇒Wild fermentation: Take a walk on the wild side of beer

 

そしてオーストラリアのワイルドエールで有名なのがWildflowerというブリュワリー。ここは2019年のオーストラリアベストブリュワリーに選ばれ、いつか行きたいと思いつつ予定が合わずに行けていなかった場所なのです。ワイルドエールうんぬんのことは何も知らなかったので、今回をきっかけに緊急度高の訪問場所に追加しました。

 

そうなんです、ワイルドエールはそれほど美味しかった!!

 

マウントフロームシラーズ ワイルドエールを飲みました

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このビールは、シドニーYulli's Brewsと、ニューサウスウェールズ州のワイン産地マッジーGILBERT FAMILY WINESのコラボレーションによって生まれました。

2019年末に起きた山火事の影響でワインにできなかったシラーズが原料に使われています。収穫したブドウをプレスし、シドニーのブリュワリーで醸造されたベースビールとブレンドした後、以前にシラーズを醸したフレンチオーク樽で7ヶ月間発酵・熟成されました。アルコール度数は7%。最大5年間の熟成を楽しめるそうです。

 

見た目はシラーズのスパークリングワインみたいです。ブリュワリーでもワイングラスで提供されたので、おうちでもワイングラスでいただきました。

香りは独特。チェリーみたいな軽やかな果実香もするけれど、それよりも前に土とか埃みたいな香りがモワンとします。なんだかあまり美味しそうな表現でないのですが、以前ナチュラルワインやシードルにもこの香りを感じたことがあります。

味わいはすごくワインに近く、Pet Nat(ペティヤンナチュレル=自然派スパークリングワイン)みたい。いつも飲むビールほど泡が強くなくて心地よいです。そして、なんといっても酸味が豊か。ブドウ果汁による酸味もあると思いますが、野生酵母からくる酸がワイルドエールのひとつの特徴なのだそうです。今まで飲んできたフルーツを原料に使った爽やかなビールとは一味違う深みがありました。また、後味に明らかなビールの苦みを感じ、やっぱりワインではなくビールなんだな、と思いました。

本当に美味しく、大大大好きな味。アルコール度数も強くないので二人で一時間もたずに飲み干してしまいました。

 

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ワインになれなかったブドウたち

遠く離れたシドニーティーにも濃い煙が押し寄せるほど大きな被害を受けた2019年末の森林火災。実際に火災被害を受けたワイナリーは豪全体で1%でしたが、ニューサウスウェールズ州にあるワイナリーの煙被害は特に酷く、ほとんどのブドウを捨てなければならない所もあったそうです。

昨年行ったオレンジのシードルメーカーでは2020年は地元のリンゴだけでは足らずに生産量が激減したお話もしていたし、ハンターヴァレーのワイナリーでも収穫がかなわなかったセミヨンがあったことも聞きました。

煙に汚染されたブドウをそのまま使うと、あまりに悲しい「灰皿のような味のワイン」になってしまいます。そんな悲劇の中でも、煙の影響をなくすための新しい手法を試したり、スモーキーグレープからスモーキースピリッツなるものを造ったりという前向きな生産者の方々の記事を読み胸を打たれました。

今回飲んだワイルドエールも、ビールができたストーリーをさておいてもかなり美味しかったけれど、「転んでもただでは起きぬ」みたいな精神に心底感動しています。プロ根性って本当にすごい。

そんなワイナリーのために非力な私ができることは、飲むこと・買うことだと思ってます。大まじめに。これからも地元のお酒をたくさん飲んで応援していきます。

 

[参考] 

Bushfires and affected wine regions

Winemakers get creative to salvage smoke-tainted grapes after Australian bushfire season - ABC News

Winemakers find alternative uses for bushfire grapes | Venture Magazine

 

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